生活面での支出は、労働や物々交換、自給することで、ある程度抑えることが可能です。例えば、早春や秋に薪仕事をすることで燃料費はかなり少なくなります。野菜も畑で作ったり、村人から安く買わせてもらったりできます。
どれぐらいの収入が必要か、どれぐらいの労働時間なら心地よく暮らせるかは各人の考え方です。「収入」と「やりたいこと」のバランスをとりながら生計の立て方をデザインすることが不可欠です。それはなかなか楽しいことでもあると思います。
移住に際して、生計が成り立つか、ということは最大の課題でもあります。
少し長いですが、米農家×猟師の小山家の場合を一例として詳しめにご紹介します。
小山家の場合、自分たちで賄える食材はお米、肉、冬野菜です。夏野菜は、田んぼ仕事が優先になり賄えていません。村の人から安く買わせてもらいます。大豆の選別作業など、ちまちま仕事をしていると、1日バイトでもして、買った方がよっぽど楽やなぁと思ったりもしますが、とりあえず、飢えることはないという安心感はあります。
燃料を賄うことが出来るのは、精神的な豊かさだけでなく経済的にもプラスです。小山家はストーブと風呂が薪です。お金がかかるのは、キッチンコンロに使うガスと、朝一番にファンヒーターで使う灯油だけです。米や豆を大量に蒸したりするときは、オクドサンが活躍しています。
ただ、薪づくりは結構大変な仕事です。春先に、村の木を必要なだけ切らせてもらい、秋まで乾燥させて、雪が降る前に山から家に運び込みます。割るのも人力です。ざっくりした印象ですが2週間以上はどっぷり薪づくりし、日々こまめに割っていくという感じです。時々、廃材をもらえることもあります。薪が家の中に積みあがると、すごいお金持ちになったような気分になります。
春先には加工品づくりも行います。麹や味噌、ハムやベーコン、ソーセージなど1年分を一気に仕込みます。家から一歩も出ないのに、実はとても忙しい時期です。その代わり、イノシシの生ハムが年中食べ放題という贅沢を味わえます。
小山家の収入は、基本的に田んぼと山からとってくるものをお金に換えて得ています。お米は、無農薬にこだわる地元のお酢屋さん(株)飯尾醸造に販売しています。30キロ当たり15,000円~18,000円と安定した金額で買い取ってくれます。また、一部ですが個人販売も行っています。年や田んぼによってばらつきはありますが、大雑把にいうと、1反(31m×31m)あたり18万円の収入で、そのうち半分が経費になります。つまり、1反あたりの利益は9万円ほどです。現在、夫婦2人で1.6町(130m×130m)ほどの田んぼをやっていますが、2.5町まで広げたいと思っています。
冬場に獲る獣肉は仲卸業者に毛皮付きのまま販売していますが、今後は解体施設を建ててジビエ肉の販売を計画しています。我が家の暮らし方だと250万円ほどあれば、心地よく暮らせると思っています。