村の記録
「最後」の藤を伐る
2016.11.11
- 藤織り
- 手づくり
- 生活の術
草刈りしていたらてるみさんが山へ行くのが見えたので、あわててストーキングしたら、やはりフジキリするという。
フジキリは藤織の第一工程で、山から藤糸の原料となる藤蔓を取ってくる作業。藤とカズラが紛らわしいし、繊維を取るには向かない藤もある。
てるみさんは、冬のナリワイとして祖母や母から技術を受け継いだという意味では、多分日本で唯一の継承者だ(藤織保存会があり、技術の伝承はなされている)。
てるみさんは、山の入り口までは老人車で向かい、いざ山に着くと背板と鎌一丁で藪の中に入って行く。
去年来た時にええのがあったで、今年も見てみようかな思いましてな。あるだないだ、分からんで。
腰は曲がっているけど、シャキシャキ登っていく。昔は上の田んぼに行く通り道だったそうだ。
これはリュウの悪い藤だ。繊維は取れんでしょうで。
何で分かるんです?
木肌でわかります。
これはええ藤だ。なんとなくあきゃあでしょう。
蔓を引っ張りながら鎌でコンコン叩くように切っていく。地面を這う見えにくい藤も見落とさないのがスゴイ。
昔は、皆が取りましたでなぁ。とぉくのコスギまで弁当持って行ったですで。重いで、山で(繊維を取り出す)皮だけにして持って帰りました。
「藤ももう今年で最後」と言うのが口癖になっているけど、まだ細い蔓に触れながら「これは来年には取れるでしょうで」と、切らずに残していた。
たくましき憧れのおばあさん。
コヤマ